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私は朝と夕方と真夜中に入浴する。朝、ぬるいうちに私がはいり、そのあと熱くして家族がはいる。それをほッとくと、夕方、私には手頃のぬるさとなっている。
「小倉組の連中が来たちふぢやないかね。ほんとうかね」
「さうだ。大したことはない」
と、房一が声をかけた。
「何分ごらんの通りの未熟者でして――」
「あれだね、君は見かけによらない――親思ひなんだね!」
膳が運ばれるまでの間、皆は行儀よく坐つておたがひに向ひ合つた顔を見くらべていた。それは改まつた、殆ど無表情に近い顔ばかりだつた。だが、さりげなく見合ふことだけは止めなかつた。その中で、房一は特に皆の注意を引いた。その無骨な容貌だけでも目立つのに、殊に彼は今夜の席では殆ど唯一と云つてもいゝ新顔だつた。彼等は今更のやうに気づいた、はるか下座の方に何となく場慣れのしない様子で坐つているのは、近頃医者になつて帰つて来たといふ噂のあつた高間の三男坊だといふことを、そこに団栗どんぐりのやうに何かむくむくした男を見た。
「どうぞよろしくお願ひします」
やゝあつて徳次が訊いた。
「やっぱり半之丞の子だったですな。瓜うり二つと言っても好よかったですから。」
「さやうでござりますか」
「金色夜叉」はやはり小説であると、わたしは思った。
「なに、ろくでもない用事で帰つたもんですから、どこへも失礼していたんです」